自作140字小説集(随時更新)


1.2018年6月1日

平成最後の夏、昼下がり、いつもの木陰。君は寂しそうに笑って、「もうすぐ、平成も私たちの夏も終わりね」とこぼす。「そうだね」僕は調子を合わせる。次の日、郵便受けにモノクロコピーが一枚。ふいに蝉の羽音が止み、雨がぽつぽつ振り始めた。分かるはずない、終わるのは夏だけじゃなかったなんて。

2.2018年6月14日

眼前には今から乗る観覧車、ゆっくり歩く君はふいに立ち止まり、きゅっと口を一文字に結ぶ。「もう、今日はここまでよ」なぜ?声がかすれる。君がさっさと帰ってしまったあと、ぽつんと取り残された僕。翌朝、何気なくつけたテレビ画面では、昨日の観覧車が燃えている。届いたメールには一言。「ね?」



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